パンダに生まれ変わりたい

さまざまな日常

STRANGER in BUDOKAN

はじめに

過去のライブレポを転生させようその①

10年近く昔の内容ということは、書いている人間も10歳若いということなので、テンションが上ずっているのは見逃してください。まあ大して変わらんか。
それよりもこれを記録として残しておきたいというところです。


当時の感想(2014年2月)

行ってきました星野源さんライブat武道館!!

いや、ほんとにこの武道館ライブまでには紆余曲折ありました。
本当は7月19日の公演だったんです。源さんが再入院したことで、延期になってしまいました。
迷ったらどうしようと思ったら怖くて、新幹線の中で気持ち悪くなりましたよ。東京怖い。
何しろ人生三度目の東京。うち一回は修学旅行です。一人で行ったことなんてないし、人の数も路線の数も桁違い!
ほんと焦りました。新幹線の中で乗り換えシミュレーションを何十分したことか。
いざ東京駅に到着すると、思っていたほどの人でもないし駅の表示もわかりやすかったので迷わずに地下鉄に乗り換えることができました。どこまで歩いても東京駅だけど。今度のダイヤ改正でのぞみが一時間に10本止まるようになるらしいですね。考えられない。
東京メトロも「これなら普段乗ってる電車の方が混んでるわ…」ってくらいで。ありがたや。
紅葉シーズンの京都の方がよっぽど混んでました。京都や大阪より駅の表示が見やすいし! さすが東京! でもやっぱ。駅広すぎ!
丸の内中央口……丸の内中央口……」とつぶやきながら歩いていた私はさぞ不審だったことでしょう。東京の人は私を透明人間にしてくれるので大丈夫ですね。
失敗といえば乗り換え改札に行くところを出口に出ちゃって入場券買い足すはめになったくらいで、すんなり武道館に続く電車に乗れました!

人の流れに沿って歩くとすぐに武道館が見えました。ここに源さんがいると思うとわくわくが止まらない!!
物販はiPhoneケースが売り切れていたので並びませんでした。今思うとばかくんキーホルダー買えばよかったな……。
人多いなーと思いながら席につきます。二階席だったのですが、思ったよりよく見える! 武道館小さい! が第一印象。
ベースが置いてあって、伊賀さんのベースだうひょー! とか思ったり、マリンバがある!! DVDのライブ映像だといなかったのに!! やったマリンバだ!!! とか思ったりしていました。
開演までの時間はひたすら教科書を読んでました。「もうすぐだねー!」とはしゃいでいた周りの方から見たら異質だったろうな。一人だし。
いや、一人で見たわけではなくて、東京の友達を待っていたのです。とても東京っ子だった…オサレ…。
そうそう、人ってうじゃうじゃいるとやっぱり肌色に見えるんですね!

そして開演! 記憶の限り書いていきます!!
・源さん、超ミニスカナースに支えられて登場。ひたすら中身を見ようとしてました。既に会場大盛り上がり。
・からの「化物」!! 黄色と赤のライト(多分)が非常に楽しそうだった! やっぱマリンバいい!!
・そのまま「ダンサー」「ギャグ」! 大好きな二曲なので半分歌ってました。この辺で「本当に源さんが生きて目の前で歌ってるんだ…」という実感がわき始める。胸が詰まって喉がぐぅってなる。
・「ダンサー」の「クラップを鳴らせ」部分はみんなでやるべきだったと思うんだ。・゜・(ノД`)・゜・。 ライトこっち向いてたし。・゜・(ノД`)・゜・。
・ともあれ漣さんのペダルスティールソロ素敵すぎる。即興アレンジなのかなあれ…。
・「おかえりー!!」の声に応える源さん。「下ネタいいっすか?」からの「ただいま○こー!!!!!」これ絶対言おう! と病床でずっと考えていたそう。ひでえ。
・「こんな端っこまで満員…。俺のつむじでも観ててください(笑)」
・観客の声に「面白くないこと言うと拾わないぞ!! …嘘ですありがとう!」
・「次の曲は手拍子をしてもらいます!(うろ覚え)」源さんに続いてみんなで手拍子。「裏からドラム入るけどめげないでね!」
・そして始まる「パロディ」! ラララの合唱楽しかった!
・「くだらないの中に」で「日常だ…この人が今日常を歌っている…」と思わず涙。最後の「くだらないの中に 愛が」をいつもとは違って裏声を使わず力強く歌っていたのが印象的。泣くよね。
・「湯気」のピアノ大好きなのでやってくれてうれしい!
・「ステップ」は源さんの曲で一、二を争うくらい好きなので、やってくれたときは声が漏れた。オレンジと水色の照明がポップでとてもよかった。
・「くせのうた」でまさかのマンドリン登場(フラット)! 漣さん弦楽器ならなんでも弾けるんだなあ…。マリンバと一緒にトレモロしてた素敵ー! 源さんの雰囲気にマンドリン合うなあ…弾きたい。
・有名人のモノマネビデオレターからのしっとり弾き語りパート!
・「スカート」「キッチン」を連続で。キッチンはばかのうたで一番好きかもしれない曲なので!! これまた幸せ!!
・「スカートとキッチンという曲でした…」ツーテンポくらい遅れる拍手。「ははは、拍手のタイミングわからないよねー」と笑い、「スカートと、キッチンという曲でしたッ!!」勢いのいい言い直しに割れんばかりの大拍手!!
・「電波塔」と、曲にまつわるエピソード。
・入院中、看護師さんに排泄の世話をしてもらった話。「風のように去っていった、そんなあの娘は」
・「そんなあの娘は、透明少女」「夏だった」というフレーズが印象的な曲。かっこいいね。
・「それでは、スタンドアップ!!」盛り上がりパート!!! ストリングスさんが入場!!
・「ワークソング」「フィルム」「生まれ変わり」「知らない」。歌詞的には暗い曲だけど盛り上がって…る!
・「生まれ変わり」のコーラス隊ほんと綺麗だった…。
・「知らない」のストリングス力強かった…。泣いてるかのような高音。サビの2小節前(?)からのストリングスはもう、ほんとに、言葉にならないくらい強かった。
・サビで原曲と同じ手拍子をみんなでするのが楽しかったです!! 「フィルム」や「夢の外へ」が特に楽しかった!!
・「レコードノイズ」だったか、始まってみんながどよめいた後に「失敗したからもっかいやっていい?」と笑顔。「頑張れー!」の声援。
・ミラーボールに反射する光がプラネタリウムのようで、思わず目を細めました。
・曲が終わり、「ウエーブやっていい?」ということでみんなでウエーブ。1階席の人速すぎかっこいい。2階席は高いからジャンプ怖いのだよ。最後の方はウエーブじゃなくてドミノって呼んでたけど。「みんな、俺のためにドミノやってくれてありがとう!! ありがとう!!」
・「これで最後の曲になります」飛び交う「えー!!!」「やだーー!!」。
・「ここだけの内密な話なんですが、実はアンコールというものがあるので、そのときはぜひ手拍子とコールをお願いします!」
・最後は「ある車掌」。しっとり。アルバムと同じ終わり方。
・再びミニスカナースにつれられる源さん。そして湧き上がるアンコール拍手。
・アナウンス「休養中、星野源さんがWiiカラオケで毎日練習を重ねた運命の曲、布施明さんの『君は薔薇より美しい』!!!」布施明風の格好で勇ましく出てくる源さん!
・源さん歌うまい!!! うまかったんだね源さん!!!(失礼)
・「ニセ明です!!」って源さん言ってたらしいのですが、私は新幹線に間に合わせるために途中離脱orz
・アンコール二曲目は「地獄でなぜ悪い」だったそう。延期がなかったら歌われなかった曲だと思うと感慨深い。
・武道館の外には音漏れ組もちらほら。
・いろんな会社からのお花がとてもいい匂いでした。素敵。


こんな感じでした!! 多分取りこぼしあるだろうなあ…。
帰りは大手町駅で迷いかけました。行きと違う、ひたすら長い通路を通りました。人もいない。
二つ目のトイレを過ぎたあたりから「これはもしかしたら時空の歪みに入り込んでしまったのでは? 無限ループって怖くね? いや怖いからうああああああ」ってなってました。東京なのに人もいないんだもん…怖いわ……。
無事時空の歪みから脱出した私は、ICカードの便利さに涙しながら東京駅へ。右手ピッ楽すぎる。
当初の計画では夜行バスで帰るはずだったのですが、行きの新幹線で翌日のテストの勉強をしたところ予想以上にまずいことが分かったので新幹線にしたのです。

で、新幹線に乗って席について一息つくと、ふと前の席のサラリーマンらしき方と目が合いました。
しかし、目が合ったまま離れない。向こうも。おかしいぞと思い記憶の糸を辿ると、なんと彼は高校時代お世話になった先生だったのです……!
私「……こ、こんにちは」
先生「こんばんは(こんな時間にこんにちははないだろ、のニュアンス)」
夜も遅いのにこんにちはって言ってしまうのは、普段学校ではとても夜に挨拶することなんてないからなんでしょうね。
ていうか!!! こんな偶然なかなかないぞ!!!!! 同じ教師に会うんだったら物理の先生がよかった!!!!!!!


さて、まとめよう。
元気な姿を見られただけで幸せだった。それが歌って踊るんですもん。最高の思い出になりました。
ここにいるみんな、源さん大好きなんだなーと思うとほくほくしましたし。
目の前にいてもなかなか信じられないんですよね。だからただただ楽しむだけっていう。感慨はいつも終わってからやってきます。
ライブから3日経ちますが、今回もCD音源が聴けなくなりました。
決して音の大きさが整ってるわけでも、音程が完璧なわけでもないのに、ライブでの演奏はきらっきら輝いてるんです。
CD聴くと「ライブの音や声を忘れたくない!」と思って聴けなくなる。
うーん、大好きな人のライブにいけてよかったなあ。また行けるといいな! とってもとっても楽しかったです!
改めて、おかえりなさい、源さん!!


改めて読んでみて

いや、若い。
若いけど、このレポを残してくれたおかげで今も私は武道館公演を思い出せる。
今となっては東京駅の乗り換えにあれほど緊張したのが信じられないし(看板見りゃわかるだろ)、大手町の無限回廊についても、大手町から東京駅まで歩けよ、と思うね……。

この武道館が私にとって初めての源さんのライブでした。
好きになりはじめた時期はお金がなかったので、なかなか東京に遠征するつもりになれなかったんだよね。
ばかくん買わなかったのは今でも後悔しています。ばかくん……。
まあでも後悔するのはライブでばかくんキーホルダー付けてる人を見る時くらいだから、そんな人間は後悔して当然です。

席、3階席のど正面くらいだった。Blu-ray見ると「これ私だ~笑」てなる。
当時のライブ経験は地元のライブハウス一回ぽっちだったので、広さ人の多さ遠さに大層驚いていた。
感想にも書いているけれどフィルムで手拍子できたのは結局このライブが最初で最後だったから、いい思い出になっています。音源通りの手拍子を自発的にできる観客に感動したのを覚えている。しっかり聴いてらっしゃるよね。
ちなみにReassemblyではひとりだったけど「日常」の手拍子ができた。良かった。夢叶うって感じ。

「アイデア」記

目の前に、星野源がいた。
Twitterで誰かが「この曲のタイトルは『星野源』だ」と言っていたけれども、まさにそのとおりだと思う。
この「アイデア」という曲は、星野源のこれまでのすべての肯定で、これからのすべての光だ。

この曲はフルで聴くのがキモなので聴いたときの順番のまま書いていこうと思う。
本当に初見の衝撃はすごかった。0時になった瞬間、一人の部屋で聴く喜び。日本中の人がこれを味わったかと思うと、いい方法だなと思う。みんな、世界で一番はじめに聴いたと思ったんじゃないだろうか。



まずは1番部分。
ドラマ版ではモノラル音源だったけど、フルはステレオだった。音の解像度が上がったこともあり、豊かな音を聞き逃すまいと頑張って聴いていたらテンポに置いていかれた。ドラマ版より速く感じて調べるもおそらく同じ。しかしBPM170台後半、そりゃ置いてもいかれる。
耳が良くないので今まであまり聞き取れなかったギターが鮮明に聴こえた。サビの裏打ちのおかげで余計に疾走感を感じたのかもしれない。
朝ドラの映像も相まって、「アイデアで日常の嫌なことも楽しくしてしまおうぜ」という曲としてめちゃくちゃに最高だと思う。朝聞いて、しゃーない今日も頑張るか、と家を出られる、そういう曲。


ここまでは良かったのだ。MUSICAのインタビューを始めとして「フルはびっくりするよ」という文言が飛び交っていたので覚悟はしていた。でも、でもさ、
こう来るとはやっぱり思っていなくて。せいぜい、今までの曲の歌詞を散りばめているしそういう集大成的な曲にするのかな~、くらいで。

2番、急に灯りが消えた。びっくりした。
暗闇で星野源さんが語る。私はこの感覚を知っている。「バイト」を初めて聴いた時の衝撃だ。首元にナイフを突き立てられたように感じた。
ぽつぽつと絞り出す声のようなビート、恨みにすら聞こえる歌詞。
まさか朝ドラの曲に「ただ生きていて踏まれ潰れた花のように にこやかに中指を」なんて歌詞が置かれると思わないじゃないか。
「笑顔の裏側の景色」と歌っているように、ヒットを飛ばした明るい曲の裏の源さんなのだなと感じる。裏面も曲にしてくれてファンとして嬉しく思う。
到底考え及ばないが、めちゃくちゃ苦しいだろう、そりゃ。流行ったのは「恋」だけど「恋ダンス」だし。一発屋みたいに言う人もいるし。世間は無責任に忘れていくし。
「源さんが生きている」と、新曲が出る度に、ライブに行くたびに思っていたけれど、こんなに痛切に揺さぶられたのは初めてだった。生きて、生き抜いてこの曲を届けてくれた、その事実が苦しいほどに有り難くて声をあげて泣いた。
サビの歌詞は変わらないからこそアレンジの違いが際立つ。
ストリングスもいてくれているので、そこまで不安は感じない。
ドラマ版を聴いたときに「これは明るい『フィルム』だ」と感じたのだけれど、2番はいよいよ「フィルム」のような切実さを感じる。アイデアを駆使して苦しみの中生き抜くという詞だ。頭に浮かぶ「雨」は街灯に照らされた土砂降りだ。
音楽には詳しくないのだけれど、2番~間奏は2018年の星野源の音なのだなと感じた。今までの裏側を、一番新しい星野源で見せている。


間奏、初めて聴いたときは不安になってしまったのだけれど、ずっと聴いていたらどんどん楽しく聞けるようになった。リズムがすごく小気味良い。
MVのダンスもめちゃくちゃかっこいいし。巻き戻しの部分、いいよね。


そしてCメロでもう一度、裏切られることになる。
というかこれ、2番とかCメロとかって呼んでいいのだろうか。「アイデアその2」とか「アイデアその3」とか呼んだほうがよくない?
ともかく、私はここで「くせのうた」を唄う星野源に出会った。
私が初めて源さんの曲を聴いたのはカーラジオで、なにかを弾き語っていた。なんとなく好きな感じの曲で、「これが運命の出会いになって、この人を追っかけるようになったりするのかな。ラジオでそういう出会いをしたいな」と思って名前だけなんとか覚えた。(帰って「星野弦」と検索して出てこなかったのを覚えている)
あのときの私みたいに、それはもうドキドキしてしまった。弾き語りの曲は、呼吸すら制御されるみたいに空気を操られてしまうのがたまらなく好きだ。
その感覚に一瞬で落とされた。
原点なのだろうな、と思う。源さんの原点は源さんしか知らないから想像だけど。
音楽と出会った、曲を作った、歌を歌った、その瞬間。
ちょっと前のライブであった、絨毯やランプのセットを思い出した。薄暗さの中でギターを弾いている感じ。


ラスサビは1番と同じアレンジだけど、今までの展開を経てからだと全く違ったものに聞こえる。すごく楽しそう。
「選んでここに立っている」という信念のようなものを感じる。全編通してだけどとにかく意思が強い。
「音が止まる日まで」と次の「つづく道の先を」がくっついているのがこれまた最高。歌詞カードでは一行空いているけど、曲を聴いていたら「音が止まる日までつづく道」にも聞こえてくる。私は「知らない」がとても好きなので、こういう風に歌われると立ち尽くしてしまう。


そしてその勢いのままに後奏になだれ込む。
SAKEROCKだ、と感じた。源さんのマリンバが叫んでいた。
SAKEROCKも聴いていたので、マリンバを源さんの声だと感じている節がある。
後奏のメロディ、どんどんマリンバの音が大きくなっていくところ。マリンバがこれでもかと唄っている。
MUSICAで夢の外への歌詞が引用されていたけれど、本当にそのとおりだと思った。星野源が、「僕は真ん中をゆく」を声高に叫んで走っていく景色が見えた。
「これからも無茶苦茶に楽しいものを作っていくからな!」と聞こえた。私には。
いやもうどんな救いだよ、ってくらい、救いだ。
最後のフレーズのちょっと引っ掛けた部分でもべろべろに泣いた。走ってコケて笑っているようで。あんまりにも楽しくて。
演奏がライブパフォーマンスみたいに感じられた。源さんやバンドメンバーがすげー笑いながら熱狂の中いつもよりちょっと勢いを増して弾いているような、そんな情景が浮かんだ。
MV見たらそのとおり走りながらジャンプしててまた泣きそうになってしまったよ。



当たり前だけれど、人間は多面的ないきものだ。でも、人間の生み出す作品は概ねなんらかのテーマを据えて作られる。「恋」には「恋」の星野源が、「くせのうた」には「くせのうた」の星野源がいる。それをあろうことか一つの曲にまとめたのが「アイデア」なのだ。
「YELLOW DANCER」から「ドラえもん」までの単色売りもMVに取り込んで集大成感を演出している。使えるものは全て使っている。
化物だ。なんだって取り込んでいく、これまでの歴史も、喜びも、苦しみもみんな取り込んで俺は音楽を作っていくんだ、という気迫に射抜かれそうになる。もはや執念と呼んだ方がいいのかもしれない。
芸術とは本来そういうものなのだとわかっていたつもりだけど、ただ識っていただけだった。
こんなに、星野源以外が歌ったら意味が消えてしまう曲はない。
歌詞に「僕」はいないけれど、「『君』と歌おう」と言っているけれど、どこまでも自分のことを歌っている。私はこの曲を歌っている人間ではないし、「君」でもない。

私は、源さんの曲を前期と後期に分けるとしたら、「僕」の前期、「君」の後期だと考えています。
前者は「くせのうた」の「僕はあまりにくだらない」、後者は「SUN」の「君の声を聞かせて」が象徴的かなと。
そして「アイデア」で新しい転換期を迎えるのだな、と感じた。これからは「星野源」の曲なのだと。
もう、楽しみで仕方がない。これからどんなものを見せてくれるんだろう。どんなことを教えてくれるんだろう。

実は、というか、私みたいなファンもいるとは思うのだけれど、「恋」がヒットしたときに、アイドルみたいな人気になったときに、(あまりにも自己中心的な)不安を感じていた。
多分、源さんが世の中に迎合してしまうのではないか、という不安だったと思う。
その不安は音楽番組に出演する度に、ライブに行く度に解消されていたけれど、定期的に湧き上がってきた(私はあの「どうも~星野源で~す!」にライブ感を感じて救われていた)。
でも、「アイデア」を聴いて、これは本当に絶対に大丈夫だ、と確信した。というかさせてくれた。
源さんは楽しい方へ走り続けているだけで、それに世間がついてきただけの話だと。もちろんマーケティングとかマネジメントとか鬼ウマなので、世の中へ向けた発信や事務所の管理もすごいと思うけどね。
改めて、私は「ファン」じゃなくて「追っかけ」だなあと感じた。というか星野源さんのファンはみんな「追っかけ」だろう。
全速力で走る源さんを追っかけて、源さんが蒔いた種を拾いそこから咲いた花を愛でる存在。そんなん、めちゃくちゃ楽しいじゃん。
こんな楽しいことさせてくれる人、なかなかいないよ。しかも全力で楽しませてくれるし。それを心の底から信用していい人って、そうそういないって。
いつか終わるとか、そんなことすらどうでもいい。
どうか、雨の中でも嵐の中でも、星野源という人の人生を見せてほしい。そう歌ってくれているなら、私も「君と歌」いたい。
「音が止まる日まで」? そんなことはない。追っかけが受け取った源さんのかけらはいつまでだって奏で続ける。音が止まる日なんて絶対に来ない。来させてやるものか。追っかけにできることは忘れないことくらいだ。こんな曲、こんな人、もう忘れられるわけがない。
申し訳ないが、私はそう信じさせられてしまったのだ。
「アイデア」という曲に、出会えて本当に良かった。

Friend Ship論

YELLOW DANCER、最後の曲。別れの曲だけど、悲しさや寂しさに溢れてるけど、同時にとても前向きな曲。

初めて聴いた瞬間からめちゃくちゃにハマった。

ノスタルジックなマリンバも、ラスサビの泣きそうなギターも、どれもこれもむちゃくちゃ泣けるじゃないか。

もともと私は源さんの曲の「明るいのに暗い、暗いのに明るい」という部分にドボンしたのだから、この手の曲にはめっぽう弱い。やわらかな別れを歌ったこの曲を最後にもってくるなんてひどいなあ、と当時は思ったものだ。

 

しかし、心の底から好きなのに、私はしばらくこの曲を聴くことができなかった。それは、歌詞カードの曲コメントのせいだった。

「離れるべきときに別れられる、それが本当の友情である」という旨のコメントは、当時SUNブームによって新規ファンがどわーっと流入してきて面白く思っていなかった私の胸に刺さった。

とにかく面白くなかった。SUNがとんでもなくいい曲なのは分かってるけど、アイドルみたいな祭り上げられ方をし始めた源さんを見るのが面白くなかった。

ただの古参老害ファン(言うほど古参でもない)に成り下がっていた私には、この曲は源さんからの「心から星野源の音楽で楽しめないのなら、それは潮時だよ」というメッセージに思えた。真っ直ぐな曲だから、余計に苦しくなる。私はこの曲のもつ朝日のような眩しさが怖くて、しばらく曲を聴くことができなかった。

 

しかし、それを覆したのもまた、源さんの音楽だった。

冬のFNS歌謡祭。夏のFNSもなかなか記憶に残る構成だったけど、こちらは全く違う意味で忘れられないパフォーマンスだった。

まるで自分のライブをやっているかのような「こんばんはー! 星野源です!!」や、手拍子や、手拍子に対するお礼。終始笑顔で自分の音楽を目一杯聴衆に伝えようとする源さん。音楽番組なのに、源さんの尺は源さんのライブだった。

源さんが私たちに「星野源」を見せようとしてくれている。それがすごく幸せで、嬉しくて、テレビの前でボロボロ泣いた。SUNのヒットがなかったら、複数公演に行けたかもしれない、新規ファンに複雑な思いをしなくて済んだかもしれない。でも、SUNのヒットがなかったら、こうやってテレビの中でファンに語りかけてくれる源さんを見ることはできなかった。見せてもらうことはできなかった。そんな当たり前のことに気づいて、今までの暗い感情が一気に吹っ飛んだ。

 

2016年はSUN以上の恋ヒットがあったのでふたたび暗黒面に落ちた私だったけれど、紅白の源さんでまた浄化されてしまったんだよなあ。

なので、なんだかんだ「離れるべきとき」はまだ来ていないと信じている。でも、その時が来たら、「離れゆく場所で 笑いあうさま」といきたいと思う。